監査法人の労働環境は今後もよくならないと思う。

監査法人のブラックな働き方が最近よく問題になっています。
 
もっとブラックな業界はあります。昔から忙しいのは大して変わってないんだ、最近の若者の根性の問題だという老害たちの本音もあります。
 
そんなくだらない不幸自慢の結果が日本の労働生産性の低さです。老害などとっとと死んでしまえ。
 
 
 
・・・それはさておき、少なくとも建前としては、どの監査法人も「働き方」の改革に取り組んでいます。
 
実際毎日毎日大量に仕事を裁かねばならず、現場のシニアやスタッフも、雑務だらけのマネージャーも疲弊しきっています。どんな会議やプロジェクトも結局「忙しすぎるのがいけないんだ」という結論になるくらい、みんなが仕事にうんざりしています。毎年どこかしらでやばい事件もありますしね。
 
だから監査法人としても働き方問題というのは放っておけないわけです。
 
 
 
でも、いろいろ問題だ対策だと言うけれど、これ、もうここ5年くらいずっと言い続けてない?
 
これから急いで対策しますと言うのは結構だけど、前に掲げた対策って結局その結果はどうだったの?ぶっちゃけ失敗してるよね?なんでそれを反省しないの?
 
 
監査法人というのは、クライアントの事業計画や見積りに対しては、「合理的根拠を示せ」とか「実績はどうだったんだ」とか口うるさく言います。
(よくクライアントとの関係がこじれるポイントのひとつです笑)
 
そのくせ自社のことになると、過去を顧みずお花畑のような実現可能性のない計画を平気で持ち出してくる。人のこと言えるかよって話です。
 
しかも監査法人の言う対策なんて、
 
「頑張って」人をたくさん新規採用する
仕事は順調に回るようになり、新規受注も増える
労働環境が良いと評判になり、さらに人を新規採用できる
仕事は順調に回り、さらに新規受注も増える
 
 
 
この程度のものです。しかし実際は、
 
 
 
仕事が回らないけど、とりあえず新規受注する
労働環境がブラックとなり、人が辞めていく。雇っても雇っても増えない。
人が増えないので依然として仕事は回らないけど、とりあえず受注してしまう
さらに労働環境がブラックとなり、ますます人が辞めていく。
 
「頑張って」採用するんだと監査法人が意気込んでも、会計士というのは年間同じくらいの人数しか合格しないのですから、「限られたパイの中での他の監査法人との人の奪い合いを頑張る」以上の意味はありません。
 
なのに採用人数を前年の30%増しにするんだとか、地方事務所だと10年後には2倍にするんだとか、平気で言っちゃう。
 
言っちゃうだけでも重症ですが、そういう楽観的なノリで新規受注しちゃうわけです。
 
 
 
 存在もしない人間を雇う雇うという前に、仕事の絶対量を減らさなければ何も変わりません。
 
業務の効率化にだって取り組んでいるじゃないか、と監査法人のお偉い様たちは言いたいかもしれませんが、その一方で年々金融庁公認会計士協会が求める監査の水準は高くなっているので、最大限に効率化してもトントン、多くの監査チームでは業務量自体も増加しているのが実情です。
 
というわけで、今後も監査法人の労働環境は改善されないと確信しています。
 

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  〉,ィiiif , ,, 'ノjノ; :.`フ)了
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  く:.:.:.:lムjイ  rfモテ〉゙} ijィtケ 1イ'´
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    〉イ 、゙!   ,ィ__三ー、 j′  
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なにマネージャー?従業員がどんどん辞めていくから仕事が回らない?
逆に考えるんだ 「仕事が回らないからどんどん従業員が辞めていく」と考えるんだ
 

セクハラ・マタハラの話

(あんまり会計と関係ありませんが)毎年やっている、セクハラ・マタハラについての研修。
 
「産休をとる女性Aに『普通子ども産むなら辞めるでしょ、復帰できるの?』と上司Bが言いました。さて、Bはどうすればよかったのでしょうか?」という具体例が挙げられていました。
 
 
中小零細・オーナーワンマンの会社ならそんな講義でもいいかもしれません。
 
しかし監査法人、それも大手となればそこそこ大きな会社です。そこでは何千人という人が働いています。そんなことを面と向かって言うキチガイは多分いないし、いても公開処刑にできます。
 
問題はもっと微妙なところでしょう。我々は実務家だと偉ぶっているわりには、実際的な想像力に乏しいのが会計士の悪いところです。例えばこんな状況なら十分にありそうです。
 
「産休をとる女性Aに『うん、お大事にね。残りの仕事は任せて』と上司Bが言いました。しかしBは部下でありAの同期でもあるCと飲みに行った日に、『普通子ども産むなら辞めるでしょ、(Aは)復帰できるの?』と言いました。Cは内心うーんと思いながらも、上司なのでそうですねーと一応同意しました。そんな調子でなんとなく会社内には産休をとるなら辞めろという雰囲気が漂っています。さて、Bはどうすればよかったのでしょうか?」
 
あるいは、
 
「産休をとる女性Aに『普通子ども産むなら辞めるでしょ、復帰できるの?』とクライアントの経理部長Dが言いました。上司BはAの産休に肯定的なのですが、クライアントには逆らえないのでAを担当から外しました。クライアントの手前、Aの後任となる人物は男性を選定するつもりです。さて、Bはどうすればよかったのでしょうか?」
 
とかね。
 
ここで、クライアントを説得できるか、どうしても説得できないならそんなクライアントを切れるか。ここまで真剣に問わないと、いつまで経っても状況は変わらないでしょうね。
 
どの監査法人も「女性の活躍」を謳っています。だったら、監査法人同士で結託して、そういう会社とは監査契約しませんとすれば、けっこう効果あると思いますけど。「わたしは反社会勢力ではありません」の誓約書みたいにさ。上場している以上、監査法人のおスミ付きが必要ですから、本当に結託されたら上場会社は断れないと思いますよ。(と思っていたら意見不表明で突っ走る東芝が出てきましたがw)
 
建前ではセクハラは絶対だめと言っているくせに、しかも監査人というせっかく強い立場にいて、クライアントを前にすると平気でひっくり返す。クライアントのお偉いさんに同調して「ごもっともですよぉ、やっぱ女性は家庭に入らなきゃねぇw」なんて笑ってるパートナー、いっぱいいますよね、きっと。会社はコミューンではないのですから、クライアントという存在が絶対にあるわけです。これではポリシーもプライドもあったものではありません。
 
それならいっそ、twitterネトウヨみたいに、思いっきり本音ぶちまけて差別する方がいさぎよいんじゃないですか?

監査報告書が長文化すると何が変わるのか。何かが変わるのか。

監査報告書が長文化する可能性があるそうです。

金融庁、監査報告の長文化を検討へ 投資家への情報提供を充実 | ロイター

 

※監査報告書とは、監査法人が監査先の財務諸表に対して監査意見を表明する書類です。要するに、会計士がこの決算でOKですと言っているわけです。上場会社と一部の大きな会社などではこの監査報告書が必要です。

 

パッと聞くと、良いことのように思えます。

投資家にとっては会計士がちゃんと仕事しているかわかるし、会社に潜むリスクを理解する助けになるわけですから。

 

 

でも間違いなく、いくら監査報告書を長文化し、監査の重点項目などを書くようにしたところで、結果としては紋切り型の同じような文章がだらだらだらだらと続く実務が横行するでしょう。

 

とくに、リンク先で挙げられている「海外の企業買収に絡むのれんの減損処理の経緯」や「内部統制の実効性」は長文化しても同じような記載になりそうです。想像できます。というか、この2つって、いま東芝で問題になっているのを持ってきただけだし。

 

現にあのクソ長い有価証券報告書は、全体の半分くらいはどこもおんなじよーなことばかり書いてありますが、あれだって投資家への情報提供のために一昔前にかなり拡充したもののはず。

 

これは多分、外国人投資家の要望があるんだろうなあ。日本の会社のガバナンス、信用されていないですからね。

 

でも書類ひとつ作るのって結構大変なんですよね。内容は形だけのコピペなのに、正式なものだから厳密にやらなければいけない。それでも結局形だけのコピペだと思うと、モチベーションも上がらないものです。

なぜ会計士は役に立たないのか

6月下旬の会計士業界。
 
3月決算の会社であれば有価証券報告書のチェックが終わり、現場のスタッフ・シニアは一息つく頃です。
 
一方でマネージャーは、翌期の契約やらなんやらの雑務で、案外休めなかったり。
 
 
 
日本の監査報酬は、欧米に比べると破格なほど安いです。
 
同じ規模のクライアントでも報酬は10分の1、なんてこともあります。
 
上場会社や大会社であれば法律で会計監査を義務付けられるものの、日本の会社にとって会計士というのは「できれば関わりたくない存在」なわけです。
 
欧米の会社では、各従業員の仕事範囲が明確に決まっていて、例えば「ハロー、ジャック、いま暇ならちょっとメグの仕事も頼むよ、HAHAHA!」なんてことはめったにないそうです。
 
ではジャックが本当に暇になってしまったら?リストラすればいいのです。そして必要があれば、また雇えばいい。
 
その点、日本の従業員は現場担当者の裁量が大きいと言われます。悪くいうと、「うまくやっとけ。何かあれば報告連絡相談」という感じ。
 
民間企業で働く友人は、夜も20時を過ぎてそろそろ帰りたいと思って、上司に「まだ何かやることありますか」と聞いたら、「うーん、今はないけど」と言われたそうです。
 
彼女は暗黙に(でも明らかに)「帰っていいですか」と聞いているのに、上司がそこをあえてスルーするのは、「やることはないけど、後で何か起こったら責任とれるのか」と思っているからでしょう。
 
裁量が大きいと、責任がモヤっとしたものになる。
 
 
 
労働環境の話になってしまいました。
 
日本の労働環境は、このようにとても閉鎖的ですが、万能な現場担当者が育ちやすいという強さもあります。
 
監査していても思いますが、うまく決算業務が回っている会社は「この人に聞けばなんでもわかるぜ!」という経理担当者がいることが多いです。
 
そして、そういう人材が同じ会社で経験を積み出世競争を勝ち抜き、管理職になり役員に上がっていく。
 
一方欧米だと、どこからか凄腕経営者を連れてきて、ストックオプションを与えて「あとは自由にやれ」とくるから、日本とはずいぶん雰囲気が違います。
 
 
 
日本の会社にとって、会計士というのはめんどくさい「だけ」の存在です。
 
会社は自分のことをわかっている(と思っている)。なのに、奴らはそれをしつこくしつこく聞いてくる。
 
しかも毎年聞いてくる(基準で決められているんです。ごめんなさい!)。
 
そうなると、会計士というのは監査証明さえ出してくれればそれでいいという発想になります。
 
監査報酬なんて安ければ安いほどいいに決まっている。
 
欧米で監査報酬が高いのは、よそからやってきた経営者がインチキ決算で自分の報酬を増やすのを防ぐという理由があります。
 
和を持って貴しとなす日本と違い、向こうは性悪説で考えている。
 
あと、訴訟が多いというのもありますね。
 
しかしこの他にも、先の「この人に聞けばなんでもわかる」的な担当者が少ないという事情があるのです。そもそもそういう人材を、自社で育てようという発想がない。
 
どのみちどこかからヘッドハンティングするなら、外注の発想で会計士を使う理由は十分にあるでしょう。
 
そうなると、会計ファームの存在感は増すことになります。コンサルとして入っていく余地も大きくなる。
 
報酬が高くなるのも当然ですね。
 
 
 
私は日本の個々の会計士がアホだとは思いません。試験結構難しいし。
 
しかしそれが集団レベルになると、途端にアホになる。
 
というか、小手先の会計知識ばっかりで、組織運営とか業界構造とか、そういうことに対する考えが高瀬川のように浅いのです。村上春樹のように言えば「想像力が足りない」。
 
日本の会社文化のことをまったく理解せず、俺たちには価値があるんだ、それをわかってもらうんだという精神論に走っている、そしてそれがもう何年も続いている、会計士というのはそんな業界だと思います。

公認会計士マルクスちゃん

初めまして。公認会計士マルクスちゃんです。

突然ですが、人類学者レヴィ・ストロースの代表作、「悲しき熱帯」の書き出し。

私は旅や探検家が嫌いだ。それなのに、いまわたしはこうして自分の体験旅行のことを語ろうとしている・・・」

大胆不敵なマルクスちゃんはレヴィ先生になぞってこう宣言したい。

「私は監査や公認会計士が嫌いだ。それなのに、いまわたしはこうして監査現場のことを語ろうとしている・・・」

 

「会計」やそれに関わる人間たちのことを書きたいです。

世間でよく読まれる会計ブログのように、簿記の資格を取るとか、実務で悩ましい取引の処理を調べるとか、そういう目的では多分書かない予定です。

ちなみに、公認会計士になるのはおすすめしません。笑